第10章 奇襲
我が子も愛しい男性(ひと)も両方救いたい、そう想いながらも自分の周りを見渡せば自分たちの命を狙っていた呪術師たちの死体と血の海が広がっている。
少しずつ冷静さを取り戻し始めた あすか は、涙を堪えながら悠に向かって微笑みかけた。
『私たちのもとに来てくれて、ありがとう…』
言葉は震え、堪えていた涙が溢れた。
あすか は涙を拭き、裏梅を見て『ゴメンね』とひと言言い、裏梅に結界を張った。
「あすか さま?! 何をするんですか!」
急に結界で囲われた裏梅は、あすかの結界を叩きながらそう言った。
『裏梅と出逢えて、楽しい時間を過ごせて幸せだったよ。
裏梅には裏梅の人生がある。
ちょっとの間、封印に閉じ込めちゃうけど、自然に解けるから…。
そしたら自由になれるから。
最後まで私のワガママに付き合わせてゴメンね』
そう言うと あすか は聞いた事のない呪文を唱え、裏梅を結界ごと封印すると裏梅の結界は見えなくなり、裏梅の残穢も消えた。
『蒼、取り乱してゴメン…。
もう少し私に力を貸してくれる?』
外気温が下がり、思うように動けない蒼だが「もちろんだ」と答えた。
『私は これから宿儺さまを助ける。
悠を抱いたままでは充分に戦えないから、蒼に悠を護ってもらいたいの』
「任せておけ」
『ありがと、蒼』
蒼の小さな額を撫で、あすか は最後に もう一度、冷たくなり始めている悠を抱き、柔らかな頬に口付けをした。