第10章 奇襲
あすか の悲鳴に似た声に、宿儺が一瞬気を取られ あすか たちの方へ体を向けた瞬間。
宿儺の背に鈍い音と熱い感覚が襲い、その場に膝をついた。
「…宿儺、油断するなと幼い頃にあれだけ言ってあっただろう」
そこには宿儺の後ろに立ち、不敵に笑う加茂憲倫がいた。
舌打ちをし、加茂憲倫に向け捌を繰り出すが加茂憲倫の結界により防がれてしまった。
宿儺の異変に気がついた裏梅が宿儺のもとへ駆けつけた時には加茂憲倫は林の中へ逃げてしまっていた。
相手の残穢を追い、反撃するべきか悩んだが宿儺を見れば、大量に出血しており刀が臓器を傷つけていることが分かった。
刀を抜こうにも出血多量で宿儺の命が危うくなってしまうため裏梅が躊躇していると、宿儺が口を開いた。
宿「あすか と悠を護れ……」
「ですが…」
宿儺の命が危ない今、裏梅は戸惑った。
宿「…早くしろッ…」
キッと裏梅を睨み、宿儺は立ち上がった。
その頃、あすか は悠の反転術式を施していたが止血出来ない。
悠は寒さと出血で顔面蒼白になってきている。
必死に 悠の反転術式を行っている あすか に、裏梅が声を掛けた。
「あすか さま…、宿儺さまが…」
裏梅の言葉に あすか は宿儺を見ると着ていた淡い着物は赤く染まり、足元には血が流れている。
腕に抱いている我が子は体温が下がり始め、自分たちの為に戦っている愛しい男性(ひと)は重症を負っている状況に あすか は愕然とした。