第10章 奇襲
自分の呼び掛けで蒼が現れるとは思っていなかった裏梅だが、反応の無い蒼に仮説が確信へと変わり始めた。
「あすか さま、悠さまを連れて屋敷を出ましょう。
…御婆の所へ行きましょう」
あすか に声をかけると、あすか は悠と一緒に寝息をたてていた。
寝ている あすか を起こす事に躊躇したが、裏梅は あすか の体を揺らし、覚醒を促した。
「あすか さま! 起きて!
蒼さまを呼んで下さい! 蒼さまも危ない!」
裏梅が あすか を起こしていると、外気温が一気に下がった。
「私と同じ氷を扱う呪術師か呪霊が居るのか?」
舌打ちをしながら避難する事を諦め、応戦する事にした裏梅は、あすか と悠を自身の背後に隠し、周りの気配に気を集中させた。
『…ん、寒っ』
一気に寒くなった気温に身を震わせ、あすか は目を覚ました。
『…裏梅?』
自分の名を呼ぶ あすか に背を向けたまま、裏梅は状況を伝えた。
「蒼さまを呼んで下さい。この寒さは蒼さまの動きを鈍らせ、結界を弱めるためだ。
屋敷はすでに取り囲まれているようですから、外に避難するのは無理でしょう」
あすか は眠る悠を ぎゅっと抱き締め、裏梅の言葉を聞いた。
「此処で戦います。宿儺さまが戻るまで耐えますよ、あすか さま」
『うん』
裏梅の後ろに立ち、あすか は力強く頷いた。
『蒼…、大丈夫なの? 蒼?』
あすか は蒼に呼び掛けるが蒼からの反応は無く、あすか は召還により蒼を呼び出す事にした。