第10章 奇襲
宿「…落ち着くまでは話すつもりは無い…。心配をかけるだけだ」
庭の植木を見ながら宿儺は そう言った。
「そぅさな。それが良い」
あすか には知らせる事なく、呪術師や呪霊を警戒する事にした。
警戒を強めながら、大きな出来事もなく過ぎていく日々。
老婆が泊まりこんでしばらくした日。
あすか の陣痛が始まった。
「大丈夫だ、あすか。
まだすぐには生まれぬ。
落ち着いて、御婆に任せておけ」
ケヒヒヒ、と笑う老婆に、あすか は緊張しながら頷いた。
少しずつ陣痛の間隔が狭くなってきた あすか の腰をさすり、老婆は裏梅と宿儺にテキパキと指示を出した。
「裏梅は湯を沸かせ。
宿儺は ありったけの布を持ってこい」
陣痛の痛みと緊張からか、あすか は老婆の着物を ぎゅう…、と力強く握りしめた。
「あすか 、息を止めるな。
腹の子に酸素が届かなくなる。
たくさん息を吸って、ゆっくり時間をかけて吐け」
うまく痛みを逃がす事ができず、呼吸を止めてしまう あすか に老婆はそう言った。
宿儺が布を持って部屋へ戻ると、老婆は宿儺に あすか の手を握るように伝え、子を取り上げる準備を始めた。
痛みに耐える あすか の手を握り何もする事のできない宿儺に、老婆が声を掛けた。
「阿呆め、あすか は お前の子を生むのだぞ!
うろたえるな宿儺!」
バシン!と老婆に背中を叩かれた宿儺は、あすか の手を しっかりと握り「頑張れ、あすか 」と声をかけた。
老婆の掛け声で いきむ あすか 。