第10章 奇襲
その晩、いつものように裏梅が酒と つまみを持ってきた。
「どうかされましたか? あすか さまが心配されていましたよ」
宿「……何でも無い」
普段より少し早いペースで酒を呑み干した宿儺は、先に眠る あすか の寝顔を眺め、自分の布団に入った。
あすか の出産が近づき、老婆は宿儺の屋敷に泊まり込む事になった。
『御婆さまがついていてくれると思うと心強いです。
わがままを言って すみません』
「良い良い、御婆は1人だからな、屋敷で待つ者もおらんから気にするな」
ケヒヒヒ、と笑う老婆。
宿「じきに子が生まれるのだ、何でも遠慮なく言えよ」
そう言う宿儺に、あすか は『ありがとう』と微笑んだ。
その晩、あすか が眠ってから宿儺は老婆に声を掛けた。
宿「御婆、ちょっと良いか?」
老婆と縁側に座り、宿儺は口を開いた。
宿「……加茂憲倫と会った」
「なんだと?」
宿儺の言葉に老婆は眉をしかめて そう言った。
宿「顔は見えなかったが、おそらく加茂憲倫だろう」
そう言い、宿儺は前回加茂憲倫と会った話を老婆に伝えた。
「何の目的で宿儺の前に表れたのかは分からんが、気をつけておけよ。
女は出産で気力も体力も かなり消費する…
この屋敷も結界が張られているようだが、油断するでないぞ」
老婆は そう言い、後ろに居た裏梅に声を掛けた。
「裏梅。お前も聞こえていたのだろう。
あすか から目を離すなよ」
「はい…」
「あすか には言うのか?」
老婆は宿儺に聞いた。