第10章 奇襲
宿「それでは出掛けてくる。留守を頼んだぞ、裏梅」
玄関で そう言い、自分を見送りに来た あすか の腹を撫でる宿儺。
宿「今日も元気そうで なによりだ」
口角を持ち上げ、あすか の腹の子に話しかける。
『気をつけてね』
宿「あぁ。早く戻ってくる」
「お気をつけて」
あすか と裏梅に見送られ、宿儺は仕事へ出掛けた。
☆ ☆ ☆
宿儺の仕事は問題なく終わった。
報酬を手に、帰路に向かって歩いていた宿儺の前に冷たい雰囲気を身に纏った初老の男が立っていた。
その男は雨も降っていないのに傘をさし、顔を見る事ができない。
不思議には思ったが、そのまま通り過ぎようとした宿儺に、その男が声をかけた。
「幸せそうだな、宿儺…」
宿「?!」
聞き覚えのある声に、宿儺は男の方を見た。
「もうすぐ子が生まれるそうだな、呪霊たちが騒いでいたぞ」
宿「お前・・、加茂憲倫か?」
傘の男は宿儺の問いに答える事なく、顔を隠したまま、宿儺が来た道を歩いて行った。
屋敷に戻った宿儺は あすか を見て安堵したが、それと同時に気持ちが落ち着かないような感覚がした。
いつも通り食事を食べる宿儺だが、あすか は『どうかしたの?』と気にかけていた。
宿儺は あすか を不安にさせまいと、「なんでもない」と答えるが、自分の前に表れた加茂憲倫の存在が脳裏にちらついた。