第8章 契り
お酒を交互に飲み干し、宿儺は口角を上げ笑った。
宿「これで夫婦だな」
夫婦、と言う言葉に あすか は恥ずかしそうに頷いた。
そして、照れ隠しのように あすか は宿儺に聞いた。
『呪術師や呪霊は、なぜ宿儺さまを狙っているの?』
宿「奴らにとって俺は凶悪でしかないからな」
庭の植木を眺めながら、宿儺は続けた。
宿「俺は加茂憲倫から 色々な術を学んだ。
それは呪霊を祓うための術だけではなく、人を呪う術も同様だ。
加茂家を含め、呪術師たちは俺に知識を与えすぎた事に恐怖を感じ、俺を殺そうとしている。
呪霊は ただ単に自分が祓われる前に俺を殺したいから狙っている」
『そんな…』
ケヒと笑い、宿儺は言った。
宿「人間など自己中心な生き物さ。
自分たちの目の届くうちは心強くても、いざ管轄外に出てしまった俺のような輩は厄介者でしかないのさ」
そう言う宿儺は遠い目をした。
宿「加茂憲倫は厳しい人だった。
だが、何度も基礎を叩き込まれたから今の応用術が作れたのも事実。
感謝している部分はあるが、あの地に戻りたいとは思わん」
そう言った宿儺を、あすか は ぎゅっと抱き締めた。
宿「なんだ?」
『戻る必要なんて無いです。
私や御婆さまが居るじゃないですか。
宿儺さまはもう1人じゃないのですよ』
あすか の腕では宿儺の大きな体を すっぽり包み込む事は出来ないが、あすか は力強く抱き締めた。
あすか の行動に、少し驚いた宿儺だったが、「そうだな」と笑った。