第16章 少年院
宿「言ったろう? 広く使おう、と」
空中に投げ飛ばされた伏黒は、宿儺との実力差を痛感していると いつの間にか空中に宿儺が居た。
「!!」
鵺が とっさに自分の翼で伏黒を包み込んだが、強力な打撃で建物に打ち付けられた伏黒と鵺は もうボロボロだ。
⦅ 鵺も限界だ…。壊される前に解いた方がいいな… ⦆
鵺の頭を優しく撫で、伏黒は鵺の術を解いた。
⦅ 生得領域を抜けるのに式神一通り使っちまった…。しかも玉犬白と大蛇は破壊されてる…。…もう呪力が… ⦆
影の中に居る式神達を想い、次の作戦を考える伏黒。
宿「お前の式神、影を媒体にしているのか」
鵺を解いた様子を見ていた宿儺が伏黒に聞いた。
「…ならなんだ」
否定しない伏黒の言葉に、宿儺は顎に手をあてて考えた。
宿「⦅ 呪符を使うありきたりな術式ではない。応用も効く… ⦆
分からんな。お前、何故あの時 逃げた?」
はぁ?、というような表情の伏黒に、宿儺は続けた。
宿「宝の持ち腐れだな。
まぁ良い。どの道 その程度ではコレ(心臓)は治さんぞ。つまらん事に命を懸けたな」
この小僧に それ程の価値はないというのに、と言う宿儺の言葉に伏黒は姉の言葉が頭をよぎった。
【誰かを呪う暇があったら、大切な人の事を考えていたいの】
疑う余地の無い善人の津美紀。
【呪い】なんかとは無縁だと思っていたのに…。それなのに呪われた。
⦅ 俺の性別も知らないで恵なんて名前を付けた父親は今も何処かで のうのうと生きている。
因果応報は全自動ではない。法の下で初めて裁かれる。呪術師はそんな報いの歯車の1つだ。
少しでも多くの善人が平等を享受できるように、俺は不平等に人を助ける ⦆