第16章 少年院
互いに胸ぐらを掴み、今にも取っ組み合いが始まりそうな様子に、それまで黙っていた釘崎が「いい加減にしろ!」と仲裁に入ろうとした その時。
釘崎の体が沼にはまるように傾いたかと思うと、そのまま床に吸い込まれてしまった。
「?!⦅ 馬鹿な、だって玉犬は… ⦆」
「釘崎!」
玉犬を探す伏黒の視線の先には、血を垂らして壁に埋め込まれている玉犬白がいた。
「⦅!! まずい!⦆
虎杖、逃げるぞ! 釘崎を捜すのは それからだ!」
そう叫ぶと同時に、2人の間に呪霊が にゅっと現れた。
⦅ ?! 間違いない…、特級だ…!
動けねぇ……!! ⦆
ゾッとし、動けずにいる2人の様子を楽しむかのように特級は ニヤァ と口角を上げた。
「⦅ 動けっ! 動けッ!! ⦆
…ぁああぁあ!」
【 人を助けろ 】
頭に響いた祖父の言葉に、虎杖は恐怖を振り払うように叫び、特級へ斬りかかった。
ゴロン…
しかし虎杖の左手は切断され、呪具ごと床に転がった。
「……………へ?」
自分に起きた事が分からず、あったはずの左手を見ると、ボタボタと大量に血が流れている。
「虎杖ッ!」
圧倒的な実力差。
伏黒は動けずにいた。
虎杖は残った右手で呪霊の顔面を殴るが、呪霊には まるでダメージが与えられなかった。
「ここまで近づかれたら もう逃げらんねぇ!
俺が死んだらお前も死ぬんだろ?! それが嫌なら協力しろよ、宿儺!!」
虎杖はいつも宿儺が現れる左頬の辺りを見ながら言った。
しかし、宿儺はそれを断った。