第16章 少年院
雨が降る中、虎杖たち1年生はこれから向かう任務について最終確認をしていた。
「この業界は人手不足が常。
手に余る任務を請け負うことは多々あります。
ただ、今回は緊急事態で異常事態です。絶対に戦わないこと。
特級と会敵した時の選択肢は【逃げる】か【死ぬ】かです。
自分の恐怖には素直に従ってください」
伊地知は1年生たちを見てそう言い、「君たちの任務は あくまで生存者の確認と救出である事を忘れずに」と釘をさした。
すると少年院に収容されている保護者と思われる女性が伊地知に声をかけた。
伊地知は馴れた様子で呪霊の存在を隠し、その場から離れるように指示した。
子どもを心配する母親の姿を見、虎杖は「助けるぞ」と決心した。
☆ ☆ ☆
伊地知により帳が降ろされ、1年生は実戦馴れしている伏黒を先頭に建物の中に入った。
呪霊の影響によるものか、建物の中は複雑にいり組み、原型を留めていなかった。
入ってきた出口も塞がり、虎杖と釘崎は混乱したが、伏黒の玉犬が出口の匂いを覚えていると聞き、2人は安堵した。
先に進むと人の形を留めていない血まみれの塊が目についた。
下半身は無いが制服の名前から、先程の母親の息子と思われる少年に虎杖は手を伸ばした。
母親の想いに寄り添い、少年を連れて帰ろうとするが、伏黒は少年がなぜ収容されているかを虎杖に説明し、続けた。
「自分が助けた人間が将来、人を殺したらどうする」
「!?
……じゃあ、何で俺は助けたんだよ!」