第14章 はじまり
その頃パーカーの少年は、花屋に寄ってから、祖父の入院する病院へ面会へ向かった。
「ちわっス!」
ステーションに声をかけ、病室に向かうと4人部屋に2つだけ名札があった。
「部活はどうした」
ベッドの頭部をギャッジアップし、一見強面の白髪の老人が怒鳴り付けた。
「うっせェなぁ。部活は5時には終わるの。
素直に喜んだら どぅなの?」
少年は気にも止めず、老人の元へ向かい、花瓶に先程買った花を生けた。
「………………。
悠仁…………、最期に言っておくことがある。お前の両親の事だが「いいよ、興味ねーから」
悠仁と呼ばれた少年は老人の言葉を遮り、「カッコつけんなよ」と言った。
花瓶を窓際に飾る少年に目をやり、老人は独り言のように話し出した。
「…悠仁、お前は強いから人を助けろ。
手の届く範囲で良い。救える奴は救っとけ。
迷っても、感謝されなくても とにかく助けてやれ」
老人は腕枕をするように少年とは反対の方を向き、少年に伝えた。
「オマエは大勢に囲まれて死ね。
…俺みたいになるなよ……」
「?
じぃちゃん?」
少年は自分に背を向けたままの老人に声をかけた。
「……………」
「じぃちゃん?」
息をしていない老人に気づいた少年は、慌てるでもなく、涙を堪えながらナースコールを押した。
[はい、どうされました?
……虎杖さん?]
「………ッ………じぃちゃん…死にました…………」
「うん、必要な書類はこれで全部。
……大丈夫?」
書類の確認をしてくれた看護師が少年に声をかけた。