第13章 宣戦布告
声のする方を向き、夏油は微笑んだ。
「あすか さん、久しぶりですね」
『…何故この子達は傷だらけなの?』
「私の"守りたい"対象では無いからですよ」
腕を組んで あの時と変わらぬ穏やかな口調でそう答える夏油。
「あすか さんが教えてくれたんじゃないですか、"自分が守りたいと思うものを貫けばよい" と」
『……………』
「あの時以来、私は迷いながら任務を続けていました。でも見てしまったんです。
…私達 呪術師から守ってもらわなければ生きいけない猿のくせに、少数派である私たちを虐げる現実を」
村の非術師を皆殺しにした事を話しているのだろうか、夏油の呪力は微かに乱れた。
「おかしいと思わないですか?
私たち呪術師は もっと敬われるべきだ。
あの一件以来、馬鹿らしくなってしまったんです。非術師を守る事が」
『……でも、やり方が間違ってると思う。呪詛師になんてなって どうするの?』
「… あすか さんも悟の味方なんですね…」
夏油は肩を落としてそう言った。
『敵とか味方じゃない。
私は傑の事も仲間だと思ってる』
「じゃあ何故、高専に居るのですか?
貴女は あの場所から動こうとしなかったでは無いですか」
夏油の言葉に、あすか は少しだけ間を置いてから夏油に言った。
『きっかけは傑、あなたよ』
「…………」
心当たりがあるのか、夏油は黙っていた。