第12章 歯車たち
「私はいつでも恵の味方のつもりなんだけど、最近は恵から嫌われちゃってて……」
苦笑しながら そう話す津美紀に、あすか は『そっか』と言い、続けた。
『家族だもん、きっと大丈夫だよ』
ぽんぽん、と津美紀の頭を撫でてやると津美紀は「うん」と頷いた。
☆ ☆ ☆
五条や家入は高専を卒業後、五条は教師兼術師として、家入は学校医として高専を拠点にして活動を続けた。
もちろん あすか も高専に居続けた。
ある時、家入は あすか に「高専の外に出たいと思う事はある?」と聞いた事がある。
あすか は『無いよ』と言うと、家入は驚いた顔をした。
『此処には宿儺さまの指が保管されてるから、外に出たいとは思わないよ』
そう言う あすか に、家入はクスっと笑って煙草に火を付けた。
「宿儺は幸せ者だね」
月日が流れても高専入学者は少なかった。
あすか の存在は公に出来なかったため、あすか は高専の地下室で過ごす事が多かった。
ある年、五条が あすか を呼び出し、グラウンドを指差した。
「見てごらん、珍しいでしょ?」
ニヤニヤしながら そう言う五条の指さす方へ あすか と蒼が視線を向けると、見たことのないものが居た。
『…何あれ、……熊??』
ぽかん、とする あすか と蒼に五条は大満足そうに あすか に話をした。
「アレは パンダ って言うんだよ♪
あすか もヘビも初めて見るよね♪」
五条に馬鹿にされたと感じた蒼は舌打ちをしながら聞いた。