第12章 歯車たち
伏黒は教師に呼び出される事も増え、津美紀は心配していた。
ある日、週末の高専合宿に来ていた津美紀は あすか に聞いた。
「あすか さん…、恵は どぅして喧嘩をしちゃうのかな?」
学校での様子を知らない あすか は首を傾げた。
『誰と喧嘩をするの?』
「学校でヤンチャしてる男の子とか…。
喧嘩している相手は、タバコとかイジメとかしてる男の子ばっかりみたいなんだけど……」
静かに津美紀の話を聞く あすか 。
「……恵がケガしたら どうしよう…」
『ケガして帰ってくる時もあるの?』
あすか の質問に、津美紀は左右に首を振ってから「今のところはない」と答えた。
『たぶん、(相手が普通の子だったら) 恵くんがケガする事はまず無いと思うよ』
あすか が教えた体術だ。
ヤンチャしてるだけの暴力とはわけが違う。
「恵は優しいから、弱いものイジメとか、そういうのが許せないんだと思うの。
でも、結局 喧嘩すれば恵だって手が痛いはずでしょう?」
『津美紀ちゃんは、恵くんが その子たちに負けるかもしれないのが心配なの?
それとも自己犠牲をしている恵くんが心配なの?』
あすか が聞くと、津美紀は「両方」と答えた。
『恵くんは口数が多いタイプじゃない分、誤解されやすいのかも知れないけど、ヤンチャしてる子たちと喧嘩するのは恵くんの信念みたいなものがあるんだと思うんだ。
だから、津美紀ちゃんは恵くんの味方で居てあげて欲しいな』
あすか は優しく笑いかけた。