第3章 旅立ち
「あすか でございます。
あすか は流れ者で、たまたま近くにいた所を私が見つけ、声を掛けました。巫女装束を身に纏っていたため、呪霊を祓う事ができるのか聞けば、出来ると言うので雇うことにしたのです」
宿⦅ 巫女装束……… ⦆
宿儺は初老の男性の話を聞きながら、以前出逢った名前も知らない巫女の事を思い出していた。
「こちらです」
初老の男性に通された部屋は遊郭が見渡せる部屋だった。
そして、その隣の部屋からは呪力を感じた。
宿「隣の部屋は その巫女が結界を張っているのか」
「さすが宿儺様。その通りでございます」
襖を開け、隣の部屋を見ると あの時逢った巫女が居た。
『貴方は……』
宿「やはり お前か」
口角を持ち上げ、宿儺は笑っていた。
宿「今の方が良い表情をしている。
お前は人を護る方が向いている。
低級達が力のある呪霊に進化しないのも お前が何かしているな?」
『力を付ける前に祓っているからね。
私はココから出る訳にはいかないから、遊郭に式神を放っているの』
宿「結界を張りながら式神を放つとは流石だな」
1人置いてけぼりの初老の男性は、やっと2人に声をかけた。
「 あすか 、宿儺様と知り合いだったのか?」
初老の男性に聞かれた あすか は首を横に振った。
『名前は知りませんでした。
ですが、一度だけ 私が呪術を使っている時に お逢いした事があります』
あすか はそれ以上言わず、初老の男性は「そうか」と微笑んだ。