第12章 歯車たち
動きっぱなしで息が上がってきた伏黒の様子を見て あすか は五条に声をかけた。
『悟、ちょっと来て。
恵くんと玉犬は少し休憩。
これから、私と私の式神で悟と手合わせするから よく見てて』
「はい…」
あすか は呪力で練った式神を出現させた。
「へぇ、あすか の式神はじめて見た」
感心する五条をよそに、あすか は五条に拳を付き出した。
あすか と五条の手合わせを見て、伏黒は驚いた。
圧倒的な体格差。
普通に体術で闘えば五条が優勢だと思われるが、式神と五条を挟み込んで五条の体勢を崩したり、式神が あすか を空へ高く飛ばす事で五条の集中を分散させている。
⦅ 凄い… ⦆
パチッ、と あすか の拳が五条のサングラスを落とした。
『はぁ~…、疲れた。私の勝ち♪』
そう言って あすか が笑うと、五条は子どものように唇を尖らせた。
「2対1とかズルいでしょ…」
『恵くん、式神と協力して闘うイメージは掴めた?』
伏黒は「はい」と頷いた。
それから週末になれば伏黒と津美紀は当たり前のように高専へ来た。
あまり人見知りをしない津美紀は すぐに あすか とも仲良くなっていた。
『お掃除ばかりでゴメンね、津美紀ちゃん』
あすか に声をかけられた津美紀は「全然平気です」と笑った。
伏黒は玉犬とのタイミングを合わせるために、障害物の多い林で走り込みをさせられていた。
「恵は…、気持ちの優しい子なんです」
『そぅだね』
津美紀の話を静かに聞く あすか 。