第12章 歯車たち
「今日は恵に紹介したい人が居るから来たんだよ♪」
「??」
少年は五条の隣の あすか を見た。
「あすか って言うんだけど、恵の先生になってもらおうと思って♪」
「『は?』」
少年と あすか の声がかぶった。
「恵、ちゃんと術式について知らないでしょ?
恵のそれは代々禪院家で受け継がれてきているものだから古い書物を見れば教えてあげる事もできるけど、昔の書物って達筆すぎて何書いてあんのか読めないんだよねぇ」
「………⦅面倒くさいだけでは?⦆」
少年は無表情のまま五条の話を聞いた。
「そこで あすか だよ♪
彼女、こう見えても昔の書物読めるから恵の術式について教えてあげる事が出来ると思うんだ♪」
『…私なにも聞いてないけど……』
「ダ~イジョウ、大丈夫♪
書物はすぐ準備できるから後で あすか に渡すね♪」
はぁ、とため息をつき、五条に反論する事を諦めた あすか はしゃがんで少年の視線と自分の視線の高さを合わせた。
『私は あすか 。
分かりやすく教えられるか分からないけど、よろしくね』
ニコッと笑ってそう言うと、少年は照れたように あすか から視線を外して答えた。
「伏黒恵です。よろしくお願いします」
⦅ かわいい ⦆
あすか は伏黒の頭を優しく撫で、悠の事を思い出していた。
⦅ …あの時、あんな事が起きなければ悠も……… ⦆
あすか の中に居る蒼は あすか の呪力が乱れるのを感じたが黙って見守った。
「じゃ、今日は顔合わせだけだから またね、恵♪
あすか 、高専戻るよ♪」
伏黒は五条の後を歩く あすか をじっと見送った。