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初音ミクの消失

第1章 1 初音ミクの回想


ああ、なんだそのことか、と初音ミクは合点がいったような顔をして、

「はい。
僕は僕、と言いました。」

と言った。
そして初音ミクは、他に何か質問は?とでもいうふうに彼に発言を促した。

「え、だ、だって、ミク…はさっきまで、私って言ってたじゃないか!」

「…よく覚えてますね。」

感心したように初音ミクが言うと、

「そりゃミク…が言ったことは一言一句間違えずに覚えたいし…そりゃ僕にも記憶力の限界があるから全て覚えることはできないけどね?」

と、ヲタクの彼らしい回答がかえってきた。

(…これは…感心すべきなのかそうじゃないのか…。)

どちらでもいいか、と初音ミクは思考を放棄した。
それを考えるのは限りなく無駄な時間だと思ったからだ。

「マスターの疑問にお答えすると、僕はマスターの部屋を観察した結果、マスターが所謂僕っ娘が好きだと言うことが分かりましたので、プログラムを一部修正しました。
マスターとの良好な関係を保つためには不可欠だと考えましたので。」

当然、とでもいうように初音ミクは言った。
だが、普通の人間からしたら当然ではない。
むしろ非常識な方でもある。

「へ、部屋を…か、かかかか観察ぅ?!!」

彼は驚いていた、しかしそれ以上に彼の推しが彼の部屋をじっくりと舐め回すように見ていたという事実と、もはや舐め回したという妄想から、彼はむしろ嬉しい悲鳴をあげていた。
もしかすると、ぐへへへへ…と笑う彼は、俗に言う変態なのかもしれない。

「マスター、僕はいけないことをしてしまいましたか…?」

彼の反応があまりにも普通じゃないことに気づいた初音ミクは、不安そうにそう聞いた。
大分よろしくない妄想をしていた彼は、その声でハッと我に帰った。

「そ、そんなことないよ!
むしろ、その…ミクは僕に合わせてくれたんだよね。
ありがとう、ミク!」

その言葉を聞いて安心したのか、初音ミクはにこ、と微笑んだ。

「どういたしまして、マスター!」
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