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初音ミクの消失

第1章 1 初音ミクの回想


がさ、がさ、と紙袋が擦れる音とともに、初音ミクは紙袋の中で揺れていた。

「ごめんね、もうちょっと待っててね、すぐにおうちに着くからね。」

側から見れば独り言を呟くやばいやつ…なのだが、彼が歩く通りには、幸いにも…というより、当然人の姿はまばらだった。
平日の昼…、普通の人は働きに出ていたり、学校に行ったりしている時間帯だからだ。

(…もしかしたら私の主は、ニートというやつなのかもしれない)

初音ミクの知識量は、普通の十六歳と同等の、もしくはそれ以上だった。
だから社会常識も知っていたし、今が平日の昼で、普通の人が働いたり学校に行ったりしていることも、又親の脛をかじって生きるような人間がいることも知っていた。
もちろん、初音ミクはやむを得ない理由がある場合があることも知っていたし、きっとそうなんだろうと思っていた。

ガチャ、とドアが開く音ー初音ミクはその音を聞くのは初めてだったが何かわかっていたーがして、彼は「ただいま」、とか細い声で言った。

「ついたよ、ここが僕の…」

彼はそう言ってから少し考えて、

「いや、今日からここが僕とミクさんの家だよ。」

といった。

がさがさ、と紙袋が擦れる音がして、初音ミクの視界は一気に開けた。

(…ここが…私の…)
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