第7章 クリスマス'21
「でも、ケーキは調達できたものの…プレゼントまでは難しかったですね」
トナカイの角をつけながら永山がポツリと言う
「あぁ、それだが心配ない」
そう言いながら風見は自分の机の下からラッピングされた箱を取り出した
中身は何だと言い寄って来る部下たちからトナカイ姿の風見はプレゼントを死守する
「天使が最高に天使になるとっておきの物だ」
自分も一目惚れしたくらいと中身を思い出しながらニタニタする風見に、一人で盛り上がるなとあちこちからブーイングが飛ぶ
「さ、研究室に行こう。今日は特別だぞ」
「っしゃー!」
滅多に入れないリュウの研究室に入れると更にテンションを上げる部下達であった
そしてトナカイを先頭にゾロゾロと廊下を歩く公安刑事達
幸いにも他の部署の刑事がここを通ることはないので、それは救いだったりする
「天使ちゃん驚くだろうな~!」
「よし、じゃあ開けるぞ」
風見がリュウの研究室のドアをそっと開けて隙間から中の様子を確認すると、ドアが開いたことにリュウは気付いていない様子だった
そこから小声で「せーの」と言いながら勢いよくドアを開ける
「メリークリスマス!!」
十数名で押し掛けるように研究室に入っていくと、目を丸くさせ時が止まっている天使とニコニコと反応を待つ刑事達とで絶妙な空気が流れる
そしてその空気を切ったのが、天使の笑い声だった
「アハハハッ…か、風見さんその格好似合いすぎ!ハハハッ」
「ちょっと笑いすぎですよ…」
「っしゃ!天使の笑顔1ゲット!」
ちょっぴり凹む風見の隣りで小さくガッツポーズを決める桜谷、そして永山が部下と二人でテーブルにケーキの箱を置く
「リュウさん、残りの休憩時間を使ってクリスマスケーキ食べましょ!」
じゃーん!と箱を開けると規則正しく並んだ苺の列の真ん中に砂糖菓子のサンタとトナカイが並ぶ、ホワイトケーキとチョコレートケーキが顔を出した
「すごーい!クリスマスケーキだー!」
「よし!天使の笑顔2ゲット!」
こちらもまた小声で桜谷に合図を送りながら小さくガッツポーズをしている
「せっかくなんでリュウさんも帽子をどうぞ」