第7章 クリスマス'21
「う"ーーーんっ…」
区切りの良い所で背伸びをし時間を確認すると、ちょうどお昼の休憩時間にはちょうどいい頃合いだった
糖分摂取しようかなぁと小銭をポケットに入れ研究室を出たリュウは、その足で公安御用達のジュース屋さんという名の自販機へと向かった
「カフェオーレがっ♪のみったいっの~♪」
気分転換に歌を口ずさみながら新しくなった自販機の前まで来ると、そこでバッタリ風見と出会う
「風見お疲れ~!」
「お疲れ様です。なんだかご機嫌ですね」
「ご機嫌ではないよ~疲れてテンションおかしいだけ…」
まだ昼ですよと午後を心配しながら自販機のボタンを押す風見
出てきた飲み物を手に取るとリュウに手渡す
「リュウさん、メリークリスマス!」
「えぇ!いいの!?」
お決まりのカフェオレを受け取って喜ぶリュウの姿が風見には尻尾を振っている子犬の様に見えて心の中がざわつくのであった
「風見ありがとう!オレからも後で何かさせてね?」
「いやいや、これはこれですからお気になさらず」
自分の分のコーヒーを買って「ではまた」と部署に帰って行く風見に、そっちもそっちで忙しいんだろうな…と見送るリュウだったが、風見の忙しいはリュウの思っているものとは全く真逆のものだった
「風見さん!ケーキの調達OKです!」
「倉庫に行ったら良い物見つけてきましたよ!」
「ご苦労。みんなまだ休憩時間は残っているな」
部署に戻るなり部下の桜谷や永山の調達も完了していてウキウキした声の報告を受ける
そう、風見の計画は、休憩時間のちょっとの時間でクリスマスパーティーをするというものだった
パーティーと言ってもケーキを食べるくらいしかできないが、出勤中の公安刑事にとってはそれだけでも嬉しいクリスマスだ
「リュウさんには言っていないサプライズだ。天使の喜ぶ顔、見たい奴はサンタ帽子でもトナカイの角でも好きな方を付けるといい」
桜谷の運んできた箱を開けて周りにいる部下達に声を掛ける
「あの、風見さんはぜひこれを着てください!」
そう言う桜谷の手には、顔だけ出せるタイプのトナカイの着ぐるみがあった
「見つけた良い物って…」
「はいコレです!天使の喜ぶ顔、風見さんも見たいですよね…」
自分だけ全身装備とは…と思いながらも着替えを始める風見だった