第5章 Third Start
桜side
目を開けたくても開けられないんです
その理由は三郎さんにじっと見られているので今、目など開けたら恥ずかしくてたまりません
すると三郎さんはまぶたを閉じて顔を近づけてきます
!?
ふと唇に柔らかい感触がありました
それは三郎さんの唇だということに気づくと恥ずかしさでいたたまれません
もう我慢の限界だと私は目を開けて彼を見つめました
見つめていると彼のオッドアイに引き込まれてしまいそうです
「お、起きてたの…?」
『すみません…』
私の顔は林檎のように真っ赤に染まっているでしょう
「いつから…起きてたの?」
『口づけを交わす少し前から…です』
そう言うと三郎さんも顔を真っ赤にして後ずさりをしました
両手で顔を覆いうつむく彼に私は声をかけます
『三郎さん、ありがとうございます』
「何が?」
『私を助けてくださったことです。今まで私があのような状況に置かれていても誰ひとり手を差し伸べようという人はいませんでした。侍女の方々も見ないふりをすることが最善の手だったということは承知しています。けれどお父様にあそこまで言ってくださったことが嬉しくて…』
すると三郎さんは優しく頭を撫でてくださいました
「桜は今までよく頑張ったよ、あんな状況で一人耐えていたことがすごいと思う。大丈夫、桜には僕たちが付いてるから、僕たちが守るから。もう二度とあんな目には合わせない。」
決意のこもった瞳で見つめられ、私はやはり三郎さんのことが好きなのだと実感します
「三郎、桜ちゃん。そろそろ晩飯にするから降りてきてくれ」
ドアの向こうから私達を呼ぶ一郎さんの声が聞こえます
「今日の晩御飯は一兄特製のカレーですよ!とっても美味しいから食べに行こう」
『はい!』
私は差し出された彼の手を取り一階へと向かいました