第15章 ただ私は春ちゃんの過去の写真が気になっただけなのに【前編】
私の大声に反応するように、ふわりと靡くキラキラとした金髪…翡翠色の瞳が私を捉えた。黒いマスク姿で一瞬分からなかったけれど、あれはきっと春ちゃんだと直ぐに分かった。潤んだ瞳で春ちゃんと呟く、すると春ちゃんは面倒臭そうに顔を背けるも苛立つように頭をかいてから私を追い掛け回していた男に殴り掛かりに行った。えっ…飛び蹴り?そして相手の男を殴り、避けて…回し蹴りでのしてしまった。まさかの無傷で圧勝である。
「は…春ちゃん…」
「お前誰だよ…気安く春ちゃんなんて呼ぶんじゃねぇ…」
「……っ」
春ちゃんって呼べと言ったのは春ちゃんなのに…そう思いながらキュッとパーカーの裾を掴んだ。うん…分かってる。この世界は春ちゃんの過去の世界であり、未来の春ちゃんじゃないって事も。それが悲しくて切なくて…また居場所がなくなってしまった、一人になってしまったとそう考えてしまうとじわじわと涙が零れ落ちた。一度眼鏡を外して頬に流れ落ちる涙を拭う。
「はっ…?」
「ーー…助けて頂いて…ありがとう、ございます…」
「はっ?えっ……はぁ泣くなよ、男だろ…」
「!…女ですけどっ!」
「はぁ?そんな訳ーー…」
私が急に泣き始めてぽろぽろと涙を溢れさせるから、驚いて狼狽えるも直ぐに春ちゃんは眉間にシワを寄せて面倒臭そうにため息をついていた。男だろと言われたものの、私は女だし好きでこんな格好をしている訳じゃないと、目の前にいる春ちゃんへ分からせる為に彼の手首を掴むと胸元に手を添えさせた。
「はっ…?」
「女だもんっ…」