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取り敢えずケーキが食べたいです【東卍夢(梵天)】

第20章 ただ私は竜ちゃんの過去の写真が気になっただけなのに【後編】


「竜ちゃん…」
「栞…?」
「今日は楽しかった。私も竜ちゃんの事、大好き…だからどうか未来で待ってて?」

竜ちゃんが私に手を伸ばす、手を掴む前に突風が吹いて目を閉じた。

ーーー

目を開けると私は外にいた。ここは私が最初竜ちゃんと会った路地裏だろうか、そう辺りを見渡せば後ろから勢い良く抱き締められた。ふわりと香る香水の匂いと見慣れたスーツに竜ちゃんだと直ぐに分かった。

「竜ちゃん…」
「っっ…良かった…ここにいると、思ってたから…」
「どうして…?」
「栞と別れた時、この大通りだったから…もしかしたらって…初めて会った時も、ここだったし…」
「……ありがとう、待っててくれて」
「!…うん、俺…待ってた…」

竜ちゃんは大きく深呼吸して、このまま聞いて欲しいと呟くように言った。私も小さく頷く、抱き締める力がこもり私の肩に頭を乗せた竜ちゃんは口を開いた。

「俺さ、栞の事…一目惚れで好きだったんだ。でもお前は元の世界に帰りたいって言ってたから、伝えるつもりはなかった…」
「……」
「でも、やっぱり無理だった…俺が栞を幸せにしたいし、好きとかじゃ抑え切れない。愛してるんだ…」
「竜ちゃん…」
「言ったよな、真剣に考えるって…俺もう諦めるの止めにしたから。栞が俺を好きになるまで…毎日愛してるって伝えるつもり」
「私は、竜ちゃんの事…好きだよ?でも…私の好きと、竜ちゃんの好きは…多分、きっと…違う好きなんだよね?」
「うん、ごめんな。困らせたいわけじゃねぇのに…でももう、帰してあげられそうにない…」

逃げてはいけない、真っ直ぐ伝えてくれた竜ちゃんの想いをなかった事には出来ないだろうし、させても貰えそうにないから…私は1度竜ちゃんに離して貰って恐る恐る振り返る。照れたように、けれど申し訳なさそうに眉を下げて私を見下ろす竜ちゃんに精一杯の気持ちを伝える事に決めた。

「ゆっくり、考えても良いかな…まだはっきりと気持ちの整理が出来てなくて…」
「うん、分かった」
「答えが出た時、聞いてくれる…?」

私が不安げな声で竜ちゃんへ問い掛ければ、笑ってと頷いてくれた。そしてまた私を抱き締めて「お帰り」と声を掛けてくれる。私も竜ちゃんの胸元に擦り寄り「ただいま」と返事を返したのだ。
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