第14章 夏だ!海だ!水着だ!プライベートプールだ!【後編】
夜空から視界いっぱいに広がるピンク色の髪、翡翠色をした瞳が私を覗かせていた。まさか春ちゃんが起きていたとは思わず、驚きながらビーチチェアから起き上がる。タオルケットを持って来てくれたのか、ふわりと肩に掛けてくれた。
「まだ外は冷えるから着てろ」
「ありがとう…どうして起きてたの?」
「……別に、理由なんかねぇよ」
「変な間があったよ?嘘だよね?」
「はぁ…何となくお前が、泣いてんじゃねぇかと思って、気になって眠れなかったんだよ…」
「えっ…?」
「初めて会った時もこんな夜だったなぁ。俺にいらぬ心配を掛けさせたくなくて、いつも通りに元気に振る舞って見せても本当は一人で泣いてんの知ってんだよ…」
「うそ…」
「今日見てぇにまた皆で遊びに行こうな?だから俺の前くらいは無理して笑わなくて良い…いっぱい甘えろ、もっと俺を頼れよ。全部受け止めてやるからさ…」
「!!っ…は、春ちゃん…私…私ね…お父さんと、お母さんに…会いたいの…っ私が、今…どうなっているのか、分からないけどっ…本当は…凄く、帰りたい…っっ」
皆優しい、とても親切だ。それでもここには私の居場所はない。抑え込んでいた想いが溢れてしまった、子供のように泣き出した私を春ちゃんはそっと抱き寄せる。タオルケットを私の頭へと被せた春ちゃんは胸元に私の顔を押し付けた、そして優しく背中を撫でてぽつりと呟く。
「誰も見てねぇし、聞いてねぇから…今はいっぱい泣け?何があっても栞の春千夜ちゃんが助けてやるからよ…」
「ふっ、うぅ゙…ひっ…」
帰りたい、会いたい…なんて言っては行けないと思っていた。ずっと我が儘ばかりして来て迷惑を掛けて来たのだからそんな失礼な事言っちゃ駄目だって。明日からまた頑張るから。でも今日だけ…今日だけは、どうか許して下さい。そう春ちゃんの胸元に縋ってボロボロと大粒の涙を流した。