第12章 やっぱり俺が責任取るわ。
「……もし傷が残ったら、俺責任取るな?」
「責任…ふふ、大丈夫ですよ?見た目程酷くありませんし…心配してくれてありがとうございます」
「ん゙ん゙っ…可愛い…」
ふわりと綻ぶように笑った栞に胸を押えて顔を覆う。しかしやはり思う事は何故追い掛けられていたのか、という事で…ちらりと顔を覆う手を離してその事を尋ねて見た。しかし彼女は分からないと悲しげに目を伏せて左右に首を振る。そんな彼女に深く聞いても良いのかと少し迷ったが、聞いて見ない事には助ける事も出来ない。例えばもしもそれで行く場所がないのであれば、栞に手を差し伸べてやろうと俺の中で考えに至った。
「何か理由があるんだろ?相談に乗れるかは分からないけど、言ってすっきりするかも知れないし…先ず俺に言ってみ?助けてやれるかも知れねぇしさ、な?」
そしてやはりと言うのか、確信めいた言葉を彼女から聞く。電車に轢かれて気付いたらここにいたと、そして訳も分からず男達に追い掛けられ俺に拾われたと…しかし身分を証明出来るものは持っておらず、頭が可笑しいと思われても仕方ない事だと嗚咽を漏らしながら涙を流した。慌てる俺は栞を何とか慰めようと声を掛けるが、栞の体がぐらりと傾いて床に崩れ落ち、膝をつきながら前屈みで倒れ込んでしまった。上手く息が吸えないのか、息苦しそうに心臓の上の洋服を掴む。掠れた声で助けて、息が出来ないと何とか伝える彼女に、過呼吸かと直ぐに理解した俺は1度彼女へ謝りを入れると自分の元へ引き寄せて、背中をとん、とんと一定のリズムを刻んで撫ぜる。ボロボロと泣いて俺に縋る栞に、安心させる声で大丈夫だと何度も言い聞かせた。しかし未だ俺の声が聞こえず軽くパニックに陥り、上手く呼吸出来ずにいる栞がいる。そんな彼女に先ず自分を見て貰おうと、そっと彼女の頬に触れて涙を拭い優しく問い掛けた。