第7章 後日お兄ちゃん見たいだと伝えれば、頭を撫でられた。
「そういやぁ…首領が直々に面会するって言ってたな、もしかしてお前がそうなの?」
「えっと…万ちゃんの事、ですかね?」
「……お前、肝座ってんなぁ」
「えっと…それは褒められてます?」
「いや寧ろ貶してる」
「ですよね…で、でも!万ちゃん公認なんで!」
「それは多分お前だけな、俺らが言ったら先ず死体だわ」
そう呆れた様子でため息をついたお兄さん…名前を尋ねると九井一と答えてくれた。じゃあ一ちゃんですね!と笑えば、ポカンとした顔をして「一ちゃんなんて初めて言われたわ」とケラケラと照れ臭そうに笑った。眼差しは鋭いけれど一ちゃんも万ちゃん達と変わらず気さくな人だと私も笑い返した。
ーーー
万ちゃんと春ちゃんがこちらに帰って来る、帰るぞと声を掛けられて一ちゃんに頭を下げた。
「誘拐するならするで、ぜってぇ足がつかないようにしろよ?」
「ご忠告どうも。まぁ…コイツは大丈夫だろ」
おい、行くぞ。と春ちゃんは私の腰に手を回す。お邪魔しましたと頭を下げる私に手を振ってくれた一ちゃんがいて、万ちゃんは私の頭を撫で回しながら「また近々遊びに行くな」と笑ってくれた。優しい…私は一人っ子だったから、もしもお兄ちゃんがいたのならこんな感じなのかな?と思えるようで私も笑顔で「待ってるね?」と伝えた。
春ちゃんの車の助手席へと乗り、煌びやかなネオン街を眺める。手掛かりがあるのなら、私はそれに賭けたい。生きているのか死んでいるのか分からないけれど…それでも両親の顔がもう一度だけ見たかったから。そう悲しくなる顔を必死に隠した。