第6章 私今日ほとんど寝てる気がする。
春ちゃんはそう言うと欠伸をして目を閉じた。がっちりとホールドされている為、手元にある携帯を手探りで見付けて春ちゃんの安心する匂いに包まれながら今日の夕飯の出前を何にしようかと春ちゃんが起きるまでの間に食べたい物を調べながら検索を掛けた。
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結局1時間程仮眠を取った春ちゃんと私は、夕飯に出前を頼みそれをもぐもぐと食べていた。その時春ちゃんの携帯から電話が鳴り、通知を見て連絡を取った。あの春ちゃんが敬語を使っているのは中々に新鮮で、相手の人は春ちゃんよりも上司という事になる。少しばかり表情が曇り、私をチラチラと見る春ちゃんは重々しくも「分かりました、連れて行きます」と伝えていた。その感じからすると私は春ちゃんの上司さんの元へ連れて行かれるのだろうか?と黙々と食べ進めていた手が止まった。
「急で悪ぃんだけど、近々ウチのボスに会って貰う事になった」
「ひゅっ」
「緊張するなっていうのは無茶な話しだが…俺以外栞の素性を知らねぇから、遅かれ早かれ会わせるつもりはあったんだよ」
「蘭ちゃんや竜ちゃんは…?」
「あ?お前が電車に轢かれてこちらに来たって事は結局アイツ等にも伝えてねぇよ?」
「どうして…」
「栞が嫌がるかと思ってさ、けどマイキーにはちゃんと説明しろ。そうじゃねぇと…俺はお前を殺さなくちゃ行けなくなる」
下手をするとお前自身がスパイ容疑を掛けられて拷問までする事になるかも知れねぇから、必ず嘘偽りなく答えろよ?そう春ちゃんは不敵な笑みを浮かべた。一瞬裏の顔が見えた気がしてドクドクと恐怖に震えてしまい落ち着かせようと胸元をぐっと握り締める。私に対してとても優しいから忘れてしまいがちになるけど、この人はカタギじゃないんだ…一歩間違えたら殺される可能性もあるんだと思い出してしまった。