第10章 さよなら北の海
ローは椅子から立ち上がるとフラッシュバックに怯えるナデシコの肩にそっと手を添える。
「心配すんな。うちのクルーはそんなやつらじゃない。
信用してくれ。」
ローの寂しそうな目に何も言えなかった。
その手の優しさと温かさに熱を覚える。
「それに、もし裏切る奴がいたらおれ達が全力でナデシコを守るから!」
「いや、まず敵からも守れよ?」
「あ、そうだった。すいません…」
「打たれ弱!!」
シャチとペンギンが同時に叫ぶとまたベポが「打たれ弱くてすみません…」と謝るので、その光景がおかしくてナデシコはくすくすと笑みを零した。
その笑顔にローの心臓がドクッと騒ぐ。
(またか…)
しばらく続いていた、胸の高鳴りが気になって仕方なかった。
それはナデシコに関わるとそうなる。
「早速今夜、話してからリバースマウンテンに行くぞ。」
ローが部屋を出るとペンギンたちも「おー!」っと声を上げた。
夜になるとローがみんなに大事な話があると全員を甲板に集めた。
「改まってどうしたんですか?というかナデシコは?」
全員が集まるとウニが会話の糸口を開く。
ローはナデシコ以外のみんながいることを確認すると頷き話を始める。
不安で仕方ないナデシコは遠くから話を聞くと言い、全員がいる空間には入らず1歩外で待機していた。
「あいつの事なんだが、ナデシコの体質について話しておかなきゃならねぇと思ったんだ。
この話をするのはナデシコも知っている。」
「ナデシコの?」
「あぁ、単刀直入に言うとあいつは不老不死らしい。」
ローの不老不死という言葉にみんな「え?」という表情になった。
「不老不死ってあの?物語で出てくる?」
イッカクの質問に答えるようにローは話を続けた。
「あぁ。おれ達も正直、最初は驚いたが実際にあいつの傷はすぐに癒えてたりするんだ。」
ふと、ウニが確かにと呟いた。
「船長がいくら能力者で医者だって言っても致命的な傷を負ってるのにすぐに回復出来るようなことは無いもんな…。不思議には思っていたけど。」
ローは少し俯いた。