第10章 さよなら北の海
シャチもベポも呼ばれたらしく操縦室の前にいた。
ナデシコがノックをすると中からペンギンが現れる。
「ナデシコか、急に呼び出してごめんな。」
「いえ、大丈夫です。ローさんは?」
「いるよ。とりあえず入って。」
中に入るとローは少し険しい顔をしていた。
その表情から緊張感が漂う。
「作業中悪ぃな。
ちょっとナデシコについて決めたことがある。」
「私の…ですか?」
「あぁ。
その不老不死のことをクルー全員に伝えようと思うんだ。」
「え?な、何を言ってるんですか?」
隠し通してきたことを今更明かすと言うローの発言にナデシコだけではなくベポも驚いた。
「そうだよ!キャプテン!今更何を言っての!?」
ベポの問いにも答えずローはナデシコに向き合う。
その間はシャチもペンギンも黙って見守っている。
「町で海軍がまだお前のことを探していたらしいな。
ペンギンから聞いた。」
「でも、だからって隠してたことをなんで今なんですか?」
「偉大なる航路を渡るなら海軍はもっと増えるだろうしお前の情報が海軍や政府から漏れたら他の海賊だってお前の首を狙うだろ。
だったらいつまでもクルーに隠し通す訳にはいかねぇ。」
「だったら、私を降ろすという選択肢だってあるじゃないですか。」
「今、そんな選択肢を出す気はねぇ。おれだって首に賞金がかかってる。」
「でも、それとこれとは関係ないですよね?」
ベポが2人の間に口を挟む。
「ナデシコは船を降りたいの?
探してる人に会いたくないの?」
「え?…それは」
「多分、キャプテンはおれたちのこともナデシコのことも守ろうと思ってるんだよ。」
「ベポ、余計なことを」
「でもそうでしょ?キャプテンはいつだっておれたちを守れる最善の案や、航海をしてきたじゃん。」
ベポの言葉に帽子をおさえ俯いた。
「でも…私…怖くて。」
自分の傷が治ったところを見られ化け物と出会ったかのように見開く視線や利用価値があるとわかった時の政府や海軍の反応。
それらが脳裏に焼き付いて離れなかった。