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尽きぬ命 愛が尽きるその日まで

第10章 さよなら北の海


ローも一通り作業が終わったのかナデシコたちのもとへやってきた。ローに気づくとペンギンがローを呼び出した。


「船長、ちょっといいですか?」

「あぁ?構わねぇが。」


2人はベポたちに食材積みを任せて2人になれる場所へ向かった。


「どうしたんだろう?ペンギン、少し難しい顔をしていたね。」

「うん…。」


ナデシコがバツが悪そうに顔を歪める。
それを見たベポは不思議そうにナデシコを見た。


「さぁ、早く荷物片付けようぜ。
すぐにでも出発できるようにな。」


パンパンとシャチが手を叩き行動を促した。
それに対して仲間たちはぶーぶーと文句を言う。


「シャチ、なんだよ。リーダーでも船長でもないのに。」

「そうだそうだ!お前も手伝えー!」


ウニとクリオネがシャチに羽交い締めをする。


「な!?やめろよ!分かった!わかった!俺も手伝うから!」

「言ったからな?」


2人はシャチを放し作業を再開する。



(本当に仲良いなぁ…。)


ずっと彼らの傍で見てきたから分かるが、仲間同士の信頼や友情に羨ましく思うところがある。

ナデシコは体質を隠すためにどこか1歩引いた所にいるようにしているからか尚更、それが浮き彫りになっていた。

くるりと踵を返し外へ向かう。


「ん?ナデシコ?どっか行くのか?」

「ちょっと外の空気を吸いに。
甲板の外には出ないようにするので。」

「………まぁ、気をつけろよ?」

「はい。」


シャチは心配そうにナデシコの背中を見つめた。
ナデシコは外に出てため息をつく。

ふと周りを見ると太陽が沈み始め空と海がオレンジ色に染まっていく。
その光景を見たナデシコは一筋の涙を頬に描いた。

普通に生きたかった。
体質なんて隠さずもっと色んなことに触れて見たかった。


そう思えば思うほどこの海賊団に迷惑をかけなくて良かった。海軍や政府に追われることもなかった。


「ナデシコ?船長が呼んでいたよ。」


しばらく夕日を眺めていたらシャチが呼びに来た。


「ローさんが?」

「あぁ、話がしたいんだってさ」


涙を袖で拭ってからナデシコはローのいる操縦室に向かった。

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