第10章 さよなら北の海
白く透き通った肌には傷どころか薙刀を持つ手のひらにはマメすら出来ていない。
ハートの海賊団として人を助けたり海賊を襲ったりしていたがナデシコの体に傷が増えることはなかった。
そのせいもありむちゃくちゃな戦いしているのはローも実の所、気になっていた。
誰よりもいち早く敵の攻撃に気づき仲間を庇う。
ローもそれに救われることはままあった。
「これから先はもっと過酷になると思う。
いつまでそんな戦い方するんだ…。」
「ローさん?何を言って?」
「いいから答えろ。」
「ローさんとしてはやめてほしいってことですよね?」
「当たり前だ。そんな戦い方してたらうちの船員も強くならねぇし、ナデシコ自身のためにもやめろ。
それにおれを庇おうとするな。」
手を引きじっと見つめた。
「偉大なる航路には今までとは全く話にならねぇ敵がいる。おれもまだそこまで強くはない。
強くならなきゃならねぇんだよ。」
「……。」
ナデシコは視線を逸らした。
前にも言われたがやっぱり体が動いてしまう。
自分は痛いだけで済む。死ぬことは無いから。
しかし、不死でもない彼らがやられるのは見てて辛いからかどうしても動いてしまった。
それでもこの先、彼らがそういった不意打ちにも打ち勝つためには行動してはならない。
頭では分かっている。
「…でしゃばりすぎでしたね。」
「そういう話じゃねぇ。」
「でも、体が動いちゃうんです。
危ないと思ったら既に庇ってるんです。
すみません。気をつけます。」
ローはナデシコを見つめため息をついた。
それなら仕方ないとは言えないが意識するよう促すしかない。
それ以上言い合ってナデシコを傷つけたくもなかった。
「分かったならいい。」
ナデシコは黙り込んだ。
気まずくてそこに居ることに耐えきれなくなり扉を開けて部屋を出た。
外の空気が吸いたくなり甲板に行くとため息をつく。
「なんかあったのか?」
急に声をかけられビクリと肩を弾かせてから後ろを振り向いた。シャチがつなぎのポケットに手をつっこんでいる。
「シャチさん…ローさんに怒られちゃってちょっと気分が晴れなくて。」
「船長がナデシコを?」
コクリと頷き水面に写る自分をみつめ話を進めた。