第9章 まるでマーメイド
船長が海に落ちてからナデシコが飛び込んだ後、大佐は一度軍艦へ戻った。その意図はわからなかったが海兵のみ相手ならハートの海賊団は強かった。
「ペンギン!かぎみっけたよ!」
シャチが海兵の一人から海楼石の錠の鍵を奪った。
ある程度の海兵を蹴散らしてからベポは海面をずっと見ていた。
海に落ちたローと助けに行ったナデシコが上がってくるかもしれないとじっと観察する。
ごぽごぽと海面に泡がたちすぐに二人が現れた。
「キャプテン!ナデシコ!」
二人に浮き輪を投げる。
ナデシコは浮き輪を受け取ると先にローを引きあげさせた。そのあと自分も縄梯子で甲板に戻った。
シャチがカギを使いローの手錠を解除する。
「二人とも大丈夫?」
「ゲホ…ガハ…あぁ、なんとかな」
ナデシコはローの無事を確認するとばたりと倒れた。
「ナデシコ!?どうしたの!?」
ベポがあわあわと彼女を覗き込む。
ナデシコは痛みでうずくまっていた。
ローは彼女に駆け寄ると抱き上げた。
「こいつさっき切られてなかったか?」
「うん。背中を」
「分かった。俺はこいつを診る。
お前らは入ってくるなよ。それと一回潜水する。」
ローはナデシコを抱きかかえ船内に入って行った。
鎮痛剤をナデシコに投与する。
不老不死にこんなことををしても意味があるのかわからないが苦しそうならやってみるしかないととりあえず持っている知識を彼女に使う。
ナデシコは浅かった呼吸がだんだん落ち着いてくる。
その様子にローも安心した。
しばらくするとドアがノックされる。
そこからよく知った声が響いた。
「キャプテン?俺たちも入っていい?」
「ベポたちか?入っていいぞ。」
扉が開き心配そうにベポたちが部屋を覗き込む。
「ナデシコの様子は?」
「痛みと疲労で気を失っている。効くか分からねぇがとりあえず鎮痛剤を投与した。」
「不老不死でも痛みに苦しむんだね…」
「………」
「おれ、心配だなぁ…」
「何がだ?」
「ナデシコが自分は死なないからっておれたちの盾になろうとしたり今回みたいに怪我したあとなのにキャプテンを助けるために無茶しないか…」
ローはベポの不安そうな顔を見てチラリとナデシコを見つめた。