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尽きぬ命 愛が尽きるその日まで

第9章 まるでマーメイド


ベポたちが彼女に駆け寄り背中を隠す。
多少血が出ているがじわじわと背中の傷が消えていく。


「ナデシコ大丈夫?」

「…うぅ。」


痛みで苦しそうに浅く息をする。
ペンギンがナデシコの耳元で話す。


「そのまま気絶したふりしろ。
それならもう狙われないだろうから。」


ナデシコは小さな声でえ?と驚く。


「私も…戦います。」

「だめだ。戦うな今は死んだふりや怪我してるフリをするべきだ。」


その時、ぼちゃんと海へ落ちる音が響いた。



「きゃああああ!」


ナデシコの声が響きローは振り返った。


まさか切り付けられた!?


声のしたほうを向くとベポが他の海兵を蹴散らしペンギンが彼女に駆け寄っていた。


「よそ見とは余裕だな。」


しまった!?


能力でまた避けようと思ったが間に合わない。
瞬時に鬼哭で斬撃を受け止める。

その重さにローは耐え切れず甲板の柵に体を叩き付けられた。
そこにいた海兵がすかさず、ローの手首に海楼石の手錠を付けた。


「しまった!?」


ハッとするときには大佐の拳を顔で食らいローは宙を舞った。そのまま海へと体が落ちていく。


「船長!」


誰かがその様子を見ていたらしく大声を上げた。
その音と声が耳に入りナデシコがばっと起き上がりペンギンを振り切って海へ飛び込んだ。


「待て、ナデシコ!」


ローは力が受けてうまく体が動かない。
海面が遠くなるのを見ながら気を失いそうになる。


くそ…!息ができねぇ!なんとかして船に戻らねぇと…


どう動けばいいか考えていると海面から何かが近づいてくるのが見えた。
それは背に光を当てて陰にしか見えない。
その影はまるで速く泳ぐ人魚のように見える。


まさかこんなところに人魚なんているわけないだろ


人魚は事情がない限り北の海にはいない。
そんなことは昔から知っている。

走馬灯か死に際の幻覚か目を細めていると顔が見えてきた。


ナデシコ!?


ナデシコはすごい勢いでローのところへ行くとその口をローの口へ押し付けた。押し付けられたと思うと空気が口伝えで入ってくる。
そしてローの方に自分の肩を入れると一気に海面へ上がった。

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