第9章 まるでマーメイド
その辺は本人にきちんと釘を刺しておかねばとローは思った。それでもその行為があるなら自分の能力を使ってでもやらせないことにする。
「安心しろ、そういうのはおれが許さねぇから」
「うん…そうだよね。よろしくね」
ベポは安心したように笑うと部屋を出ていった。
ローはバタンと扉が閉まったのを確認するとふと、おとぎ話を思い出した。
それは人魚が人間に恋をして振られ相手を殺せば助かるもののそんな残酷なことは出来ないと身投げする話。
恋なんてしてないが妙に重なる気がして心が重くなる。
それはきっと海で見た彼女のシルエットがそれっぽく見えたせいだろうと自分に言い聞かせる。
「ったく…無茶するんじゃねぇぞ」
ナデシコの白い頬を指でなぞった。
ナデシコが目を覚ましたのはやけに甲板が騒がしかったからだ。
「ええええええええ!?」
驚いたシャチとペンギンが叫ぶ。
その大きな声が響きナデシコが目を覚ます。
何事かと思い、重い体を起こして甲板に向かった。
「あ!ナデシコ!体調はどう?どこも痛くない?
気分は?」
ベポが扉の開く音に気付いて駆け寄ってきた。
心配そうにナデシコを気遣ってくれる。
「ありがとうございます。
なんとか動ける程度には」
「そっか、良かった。」
「あの…この騒ぎはどうかしたんですか?」
「え?あぁ…キャプテンがね偉大なる航路に向けて船を進めるって決めたんだ。それでみんな驚いてたんだ。
おれは航海術の腕を認められて嬉しかったけど」
ベポは嬉しそうに照れ笑いをしていた。
その様子を見て、ナデシコはかわいいなぁと優しく微笑んだ。