第8章 知らない感情
ローが1人で海賊になり旅に出ることを伝えるとシャチもペンギンもベポもどこまでもついて行くと。
ハートの海賊団はそこから始まった。
「そういや、アイツらも同じようなこと言ってたな…
ガラクタ屋…いやヴォルフも元気だろうか」
ローは数ヶ月前に出港した時のことを思い出してつい口元が緩んだ。
目的まで一体何年かかるか分からない。
「…それでもおれはコラさんの本懐を遂げる。」
ロー以外誰もいない部屋で決意はより強いものとなった。それは先ほど、彼女が言ってくれた言葉のおかげだった。
それからローはナデシコを知らず知らずに目で追っているということに自分でも気がついていなかった。
シャチとペンギンとの鍛錬に汗を輝かせ、ベポと航路や地図に航海術の勉強を真面目に取り組む。
彼女自身、世界に興味があるのか努力を惜しまない。
「あ、キャプテン!聞いてくださいよ!ナデシコがあれからもっと強くなったのか、おれでもタジタジになっちゃって〜」
シャチと訓練をしていたのかハァハァと息をお互い切らしていた。そこへローがやってきたというわけだ。
「それは、お前自身も強くなる必要があるからだろ。そいつの鍛練に気を取られて、お前自身はどうなんだ?」
「ぐ…それは…なんとも言えないっす…」
「フフフ、シャチさんも私に追い越されないようにしなきゃですね!」
シャチはローとナデシコに言われがくりと肩を落とした。それを見ていたナデシコがおかしく笑う。
強く美しいといわれそうな綺麗な顔立ちからまるで子どものような愛らしい笑顔にふとローもつられて笑みがこぼれた。
夜になり潜水をしていると、ナデシコの姿が見当たらなかった。
「あいつどこに行ったんだ?」
キョロキョロと辺りを見回しナデシコを探す。
ナデシコは海底がよく見える窓際に座り、物思いに深けていた。
いつもの笑顔はなく、悲しいわけでもなさそう。
儚げに何かを見つめているようなその横顔につい声をかけることも忘れる。
「あ、ローさん?どうかしました?」
ナデシコに声をかけられローはハッとする。
「いや、もうすぐ島に着くからそれだけを伝えに」
「そうですか。」
「何か考え事でもしてたのか?」
ローから視線を逸らしナデシコは窓の外を眺めた。