第8章 知らない感情
その言葉にナデシコは俯いた。
守れないわけじゃないけど守れる自信がない。
「そんな、表情するな。
すぐにお前が死ねる糸口でも見つけてやる。」
「え…?」
ナデシコが聞き返したかったがローはそれ以降何も言わずもぐもぐとおにぎりを頬張るだけだった。
しばらくしてナデシコが口を開いた。
「ローさんはなんで海賊してるんですか?
よく言ってる目的ってなんですか?」
「……ある人の本懐を遂げるためだ。
おれがヘマしなければあの人が死ぬことは無かった。」
「そうなんですか…」
何かを見据えるような真っ直ぐとしたその目と横顔があまりにも綺麗でナデシコはほわっとした返事しか出来なかった。
(綺麗な人…)
視線に気がついたのかローがナデシコを見た。
目がパチッと合ったのがなんだか照れくさくて咄嗟に視線を逸らしてしまった。
やけに顔が暑く感じる。
「も、目的果たせるといいですね…!
私でよければ力になりますから!
…すみません。失礼します。」
いつの間にか空になった皿を下げてナデシコは部屋を後にした。
ナデシコは自分の体の変化に困惑していた。
ローと目が合った時の心臓の高鳴り方、頬の熱み
ドキドキと胸が不思議と騒ぐ感覚がよく分からない。
「なんなの?病気?」
病気なら4〜5日位で治るはずだ。
そう思いナデシコは様子を見ようと落ち着こうとした。
ローはナデシコに目的を話した。
ドンキホーテ・ドフラミンゴが王下七武海に入り、ドレスローザ国王に君臨。
打倒ドフラミンゴは大々的に取り上げられたその記事を見てから、決めていたことだ。
彼が国王になってからドレスローザでは不穏な噂が度々流れる。
(きっとあいつがなにかしている。)
その確証がないため、大きなことは言えない。
とにかく今は情報集めをしなくては…
そう思うがほぼ、ほぼトカゲの尻尾切りみたいに掴んでは離れていく。ようやく、この前の誘拐事件で1部、手に入れられたがほんの一部のためまだ決定的なことは何も掴めていなかった。
自分の目的に仲間を巻き込んでいいのか自問自答を繰り返す。
「目的果たせるといいですね。私でよければ力になりますから!」
その言葉にローはハッとした。
仲間も同じことを言っていたと。