第8章 知らない感情
ローは1件が落ち着くと1人になりたいと言い自室に籠った。自分を傷つけることも躊躇いなかったナデシコのことを考えていた。
「何されたらそんな風になっちまうんだ…」
島で初めてのことを見て目を輝かせていたが、ふとした時に垣間見えた生気のないような目が気になる。
はぁと息を漏らし頭を抱えた。
(たかだか女1人だぞ…おれにはやらなきゃならねぇことがあるのに)
ナデシコのやることが心配になり気持ちが落ち着かない。
コンコンと扉を叩く音がした。
こんな時になんだ…1人にしろと言ったはずだろ。
ローは苛立ちながらも扉を開けた。
「あの…取り込み中ごめんなさい。
さっきのことで話したくて…」
ナデシコが夜食用なのかおにぎりとお茶を持ってきた。おにぎりが好きというのはベポたちから聞いたらしい。
「話ってなんだ?」
「研究所にいた時の話を…」
「……分かった。」
「えっと、どこから話せばいいのか…」
「どこでもいい。」
「…聞きたいこととかありますか?
政府研究所にいた3年間のことなら話せます。」
「じゃあ、まず。どんなことをされたんだ?
具体的に教えろ。」
「…まず、採血とかで血を抜かれたりしました。
その後は、目隠しをされ腕を切られたり心臓を刺されたり…。」
「心臓?」
「刺されてもすぐに細胞が元に戻そうとするらしく、心臓刺しても死ななかったんです…。
首を切られたこともありました。その時は神経まで切られて2、3日体を動かせなかったけどしばらくするといつも通り動ける体になっていて、首を切り落とそうとしても骨が硬いらしくて切り落とせないって誰かが言ってたのを聞きましたし…。」
「……。」
なんて酷いことを…
ローは怒りや呆れなどが混ざった感情に胸をグルグルされる。
目の前に話している女は自分らと歳が幾分変わらない。しかし、やられていることはほぼ拷問に近いじゃないか。
それは自分を傷つけることも厭わなくなる。
「そうか…だからといって自分で自分を傷つけるな。おれの仲間だってそういう所を見たくはないはずだ。
いいか?ここにいる以上、ルールは守ってもらうかな」
ローはそう言うと1口パクッとおにぎりを口にした。