第7章 隠した傷跡
多かれ少なかれ傷を抱えてるやつを助けないわけにはいかない。ハートの海賊団の名前には船長やおれ達を救ってくれた人、受け入れてくれた心が由来だったりするんだ。
そうペンギンが話しているとローがやってきた。
「ペンギン。喋りすぎだ。」
「あ、船長。聞いてたんすか?」
「そりゃあ、そんな声で話してたら耳に入るだろ。
伝声管も開いてるんだから。」
呆れたようにローはため息をした。
「あの、ローさん。ペンギンさんからは話せないけどって言われたのですが病気だったんですか?」
「少し昔の話だ。今は自分の能力を使って完治させた。
ペンギン。席を外してくれ。」
「了解。」
ペンギンが部屋から出るとローは伝声管を閉じて静かに話し始めた。
珀鉛病のこと、家族友達を政府に奪われたこと。
海賊の仲間になったことや殺された恩人のこと。
「おれにはそんな過去がある。コラさんには命も心ももらった。」
「そうだったんですね…。すみません、いやなことまで思い出させちゃいましたね。」
「いや、気にしねぇ。むしろ時々こうやって話す方がいい。話す度にやるべき事や目的を見失わずに済むからな。だが、お前は無理に話さなくてもいい。
誰にでも傷はあるだろうし。」
この人になら少しくらい言っても…。
ナデシコはゆっくり言葉を選びながら話し始めた。
「みなさんとお会いした時、海軍から逃げ出したと話はしましたよね?」
「あぁ。」
「私…世界政府が関わる研究所で実験台だったんです。」
「なに…?」
「ごめんなさい、実験台になった理由を話すにはまだ気持ちがついてこないので話せないです…。
でも、いつかちゃんと話せる時が来たら話すので。
えっと…それでこの前の島に海軍がいたのは天竜人に私を会わせるために連れてきた時に私が逃げ出したからなんです。」
ローは黙って話を聞いていた。
「それで、海軍に追われているということか…。」
「はい…。でも、みなさんに迷惑かけたいとかはないです。もしも私のせいでみなさんが危ない目に合うならすぐに船を降ります。」
「降りてどうするんだ。」
「え…あ…」
ローの言葉に喉が詰まった。