第7章 隠した傷跡
ナデシコの目から涙が溢れた。
きっと彼なりの気遣いなのだろうと感じたからだ。
話せるなら話したい。
でもそれが何よりも怖かった。
不老不死とばれたら?実験?それとも海軍や研究所に引き渡される?
気持ち悪いと蔑んだ目で見る?好奇の目で見られるんじゃないか?不安で不安で仕方なかった。
そこへペンギンがやってきた。
「ナデシコ?ベポの声聞こえてなかった?
船長も戻ってきたからそろそろ潜水するんだが?」
ペンギンはじっとナデシコを見た。
ヒクヒクと口元を押さえ涙を流している。
「船長になんか言われた?」
ふるふると首を横に振り否定した。
「ねぇ、よかったら少し話しないか?」
ペンギンの言葉に頷きナデシコは船内へ戻った。
暖かい紅茶を入れてナデシコに渡した。
「ありがとうございます。」
「いや、気にしなくていいよ。」
ナデシコは紅茶を啜る。
飲んだことのない味だったが暖かい飲み物に胸元がじんわりとほぐれた。
「おいしい…」
「そりゃよかった。」
「…皆さんはなんで事情も話さない私なんかに優しくしてくれるんですか?」
「え?あぁ…。船長がそういう人だからかな…?」
「ローさんが?」
「うん。船長含めおれたちはとある人に3年間お世話になったんだよ。
そりゃもうすごいクセのある人でさ!
この潜水艦を作ったのもその人なんだ。」
「へぇ…」
「おれとシャチは親が死んでからシャチの親戚に引き取られたんだけど盗みとか含めて悪いことをさせられてて。
おれたちはそれはそれは荒れに荒れまくってたんだ。
そこへ船長と出会ってその人と一緒に過ごしていくうちにおれたちは心をもらったんだ。
シャチのおじさんたちの悪巧みを暴いてくれておれ達を立派な人間に育ててもらってよ。
実は知らなかったが船長は船長で病気持ちだったんだ。おれからは言えねぇけどいずれ聞いてみるといいさ。
まぁ、だからどんな事情があろうとおれ達がナデシコを受け入れない理由はないんだ。敵だったら潰せばいいし」
口元しか見えなかったが何となくペンギンの目元がキラリと光ったようにナデシコには見えた。