• テキストサイズ

尽きぬ命 愛が尽きるその日まで

第7章 隠した傷跡


外に出ようと甲板に出る扉は開けっ放し。
換気するために海上にいる時は開けるようにしているからだ。

そこから見えた人影。彼女だ。

ナデシコは月明かりに照らされて自分の手を見つめていた。その横顔の儚さに一瞬、息を飲む。

なにを思いそんな表情になるのかローには分からなかった。


「こんなの…ただの呪いよ」


(…呪い?なにかしらのろわれているのか?)


ローは思わず声を出してしまった。
ローに驚いたナデシコはすぐに手を隠した。


「ローさん…どうしてここに?」


どうもこうも、自分がどこにいたっていいじゃねぇかと心でボヤく。


「おれも夜風にあたろうと思ったんだ。」


ローの言葉にナデシコは俯いた。
ナデシコの隣に来るとローは柵に寄りかかった。


「シャチを助けられなかったと思っているのか?」

「え?あ…まぁ…」


ローは別にそういうことが聞きたいとかはなかった。しかし、どう見ても何かを隠す彼女がなにを隠しているのか聞くに聞けなかった。


「おれはお前がいて助かったと思っている。
もしも、お前がいなかったらシャチはもっとボロボロだったかもしれねぇからな。」

「ローさんは何も思わないんですか?
自分の仲間がボロボロになってて一緒にいたよく分からない女の人が無傷なんて。」

「そんなの実力の問題だろ。お前は上手く立ち回れた。
それだけだ。余計な詮索はしねぇよ。」

「そう…ですか。ローさんは怪我するの怖くないですか?」

「海賊にそれを聞くのか?
常々、命はってるやつに」


ローはおかしく笑った。


「死ぬのもですか?」

「あぁ。だが、死ぬ気はねぇな。」


ローの言葉にナデシコはキョトンとした。
不思議だった。生き方がかっこいいと。


「ローさんは…………やっぱりなんでもないです。」


ナデシコは何かを言いかけたが話すのをやめた。焦って不老不死のことを聞くのは良くないと思ったからだ。
そこへベポの声が響いた。


「キャプテーン!そろそろ潜水始めるよ!」

「あぁ、今行く。」


ローは大声を出してからそっとナデシコに耳打ちをした。


「焦らなくていい。なにを隠しているのかは気になるが話したくないなら話すな。何があってもおれたちは驚かねぇ。」


ローはそう言うと先に船内へ戻って行った。
/ 91ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp