第1章 永遠の牢獄
村へ行くと、どこぞの誰かが死んだのか葬式らしきものが執り行われていた。
ナデシコも葬式がどういうものかよく分かっている。
嫌という程見てきたその光景はナデシコの心を抉った。
「ハナさんのとこの旦那さんがねぇ…」
涙で頬を濡らし俯く彼らを横目にナデシコは野菜と山菜を売りに村の中へ入っていった。
私だっていつか泣いてもらえる日が来るのだろうか?
ナデシコは心がキュッと締め付けられる感覚に胸を押さえた。
人を愛した分だけ手放すのが辛くなる。
人に愛された分だけその人を置いて去ることが苦しくなる。
それならいっそずっと一人ぼっちでいいと自分に言い聞かせていた。
なぜか数十年前に言われた言葉が引っかかる。
「怪我がすぐに治りやがった!気持ち悪い!」
「妖怪だ!妖怪だ!妖怪じゃなければ化け物だ!」
同じくらいの見た目をした男の子たちに言われた言葉が胸をグサリと刺した。
それ以降ナデシコは山で人知れず暮らしていた。
一人ぼっちなら苦しいことも辛いことも考えずに済む。
もう、誰かが私の元を去るのは見たくない。
ナデシコは下唇を噛み葬儀の列を横目で通り過ぎた。