第5章 知らなかった世界
パン屋を出てから次はどこで何を買おうかと町を歩く。
ナデシコはすれ違う子どもが持っているとろりとした食べ物が気になったらしい。
「ねぇ、ローさん?あの女の子が持ってる食べ物ってなんですか?」
「あぁ?あれはアイスクリームだ。」
「アイスクリーム?」
「冷たいお菓子。」
「あぁ!かき氷みたいなものですね!」
「まぁそんなところだ。……食べたいのか?」
「あ!?そういうんじゃなくて…ちょっと気になっただけ」
「甘いぞ、しかもとても」
「とても甘いの?」
ナデシコの目が泳いだ。
とても気になるらしい。
ローは向こうからやってくる子どもの大体はアイスを持っていると見てその方向に歩いた。
どうやらアイスワゴンがあるらしく親子が並んでいた。
親に買ってもらったアイスを食べながら子どもたちが嬉しそうに食べている。
ようやく自分たちの番になるとローはアイスを2つ買った。
「すみません、今イチゴとチョコレートしかなくて…」
「じゃあそれでいい。」
アイス屋からアイスを受け取り近くのベンチに座った。
ローからイチゴのアイスを受け取ると1口舐める。
いちごの甘酸っぱさと牛乳の甘みが口の中にじんわりと広がる。
その美味しさにナデシコは感動した。
「ほんとに何も知らない…ってなんで泣いてるんだ!?」
ナデシコの目からポロポロと涙が溢れていた。