第5章 知らなかった世界
どれも聞いたことあるようなないようなものばかり
でも、研究室に幽閉されてた時とは違うであろう芳しい香りに辺りをキョロキョロと見渡していた。
「どれが食いたい?」
「え、えっと…どれがいいか分からないからローに任せます。」
「じゃあ、店主がおすすめのその3つを貰おう。」
ローは袋からお金を出して店主に渡した。
店主は気前よく笑うと慣れた手つきでパンを紙袋に詰める。
「あいよ。お嬢ちゃん、なんだか落ち着かないがこういうとこは初めてなのかい?
それならせっかくだしこれも食べないか?
もちろんオマケだから金はいらねぇ」
「あ、そんなお構いなく…!」
「ハハハ気にしねぇでくれ!おれはおれの作ったパンが美味しそうに食べてもらえるのが嬉しいんだ!」
店主は美味しそうにふっくら焼けたばかりのパンをナデシコに渡した。
チラリとローを見上げ良いのか?と目線を送るがローは受け取っておけと言うとカブリと食べ始めた。
フワッとする小麦の香りにほのかな甘さ、雲のようにふわっふわのパンは今まで食べたパンよりとても美味しかった。
「ん〜〜〜!」
目を輝かせまたパクリ、さらにパクっとかぶりつく。
まるでリスのようにほっぺを膨らませてモグモグするナデシコに店主は嬉しそうに笑った。