第5章 知らなかった世界
準備が終わると黄色い潜水艦は島から離れた。
ゆっくり沖まで行くとキイィィィンと耳障りな音を立てて潜っていく。
初めて見る海の中には珊瑚や色とりどりの魚が泳いでいた。こんなにも海の中にも色鮮やかなものがあるなんてとはしゃいでいた。
「ベポ!あの魚はなに?」
「どれ?」
「あの赤い目の!」
「ハゼだよ。その隣にいるのがウミウシ。
そこの触覚がいっぱいあるように見えるのがイソギンチャク。
ノースブルーではあんまり見かけない魚たちだね。美味しそう。」
ベポはじゅるりとよだれを垂らした。
その隣であれは?これは?とまるで好奇心に駆られる子どものようにはしゃいでいる。
そんなナデシコを少し離れたところからローは見つめていた。
「船長、自動操縦に切り替えました。
しばらくはこのままでも大丈夫っす。」
操縦室からシャチが出てきた。
ローはチラリとシャチを見て軽く返事をする。
すぐに視線を戻した先にいるナデシコをシャチも見つめた。
「まるで、子どもみたいっすね。
あんなに楽しそうに窓に張り付いちゃって」
「島の外に出たと思ったら海軍や研究室に閉じ込められたんだ。無理もないだろ。
ただえさえ、ワノ国は鎖国国家。外の連中とは関わりすら持たない国だ。」
無邪気に笑うのを見ているとローもシャチも嬉しくなるみたいで大きなしろくまの隣に並ぶ少女を優しく見守っていた。