第3章 動き出した運命の歯車
ナデシコはとにかく先へ先へと手を伸ばし海を泳いだ。すぐに海軍や研究者関連の人達が自分を探しに来るかもしれない。
北の海と言われるだけありその海の冷たさはナデシコの体力を奪っていく。それでも体力を振り絞って体を動かした。
2回ほど太陽が沈むのを見てから3度目の日の出が確認できる頃。ようやく、どこかの島に辿り着いた。
浅瀬に足を踏み入れると安心したのか眠気に襲われる。
3日くらい寝ずにひたすら泳いでいたから無理もない。
眠気と寒さで頭がおかしくなりそうだったが、今おかしくなっては逃げ出した意味がなくなってしまうと思い、ナデシコは漂着物の木の破片を自分の太ももに刺した。
「うわああああああ」
痛みで意識がハッキリした。すぐに傷は消えていくが痛みはしばらく続く。足を引きずりながら島へと踏み込む。町や村はなくどうやら無人島らしい。
とにかく、今は濡れた服を乾かすのと体を温めたかった。火がつきにくいのは分かっていたが漂着物の木を集め島の山から転がってきたであろう石を拾う。
石をカチカチと摩擦させその火花を集めた枯葉に落とす。
なかなか点かなかったが何回かした時ようやく枯葉に火がついた。
急いでかわいている枝を置いてから漂着物を置いた。
「よかった…何とかなりそう…」
久しぶりに見る火の温かい光にナデシコの頬に涙が流れた。