第3章 動き出した運命の歯車
それから2ヶ月が過ぎた。
「食料が尽きそうね…」
「仕方ないよ。早く島を見つけて食料を何とかしよう
それまでは魚でも釣って食いつなごう…」
2人が話していると遠くからドオンドオンと重い音が響いた。
「なんの音だ?」
「分からない…けどなんかすごい音…ねぇ?
こっちに近づいてない?」
目を凝らしてみるとどうやら海賊と海軍が戦闘しているようだった。
「巻き込まれたら大変だ…早く離れよう?」
キチベエが舵を取り離れようとしたが風向きが悪かった。
帆が煽られ、いくら舵を取ろうとしても全く効かなかい。
船はどんどん交戦している場所に吸い込まれるように近づいた。ドオンと大きな音が響くと大砲の流れ弾が2人の乗る船を貫いた。
「そこの船!止まりなさい!海賊がいるから!」
大きな軍艦から大きな声が響いた。
「止まれねぇんだよ!?」
キチベエが叫んだ。さらに大砲が流れて来て2人の乗る船を真っ二つにする。
勢いもありバランスを崩すとナデシコは海へ投げ出される。
「かあさん!?」
手を伸ばし焦る顔が幼き日の面影と重なりナデシコは微笑んだ。
それがキチベエを見た最後の時だった。
ザブンと海に投げ出され散らばる船の破片に白い肌を切り裂かれる。しかし、彼女の傷は治っていく。
(早く、海面に上がらなきゃ)
必死で手を伸ばし足を振り海面へと泳いだ。
ぷはっと顔を出し息を吸った直後だった。
柱だった大きな木が倒れてきた。
ザバンと音を立て倒れてきた木に頭をぶつける。
さすがのナデシコも脳震盪を起こし気絶した。
海賊が退散した海では軍艦が一艘そこに居座っていた。
そこでは海兵たちがざわざわと騒いでいた。
「なぁ、この女の服…噂で聞くワノ国の着方じゃねぇか?」
「こいつ、あの戦闘に巻き込まれてるのに傷一つねぇぞ」
酷い頭痛に目を覚ましたナデシコは辺りを見回す。
目を開けるとそこには2人の男が見張りとして立っていた。
傷は治ってもその痛みはすぐには治らない彼女はフラフラと立ち上がった。
「すみません…ここはどこですか?」
彼女の声に気づき男は振り返った。
「あぁ、ここは海軍軍艦だよ。
お嬢ちゃん海に投げ出されたのおぼえているかい?」
ナデシコはこくんとうなづいた。