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尽きぬ命 愛が尽きるその日まで

第3章 動き出した運命の歯車


キチベエが諦めたようにナデシコに立って奉行殿の前に行って欲しいと頼む。

「聞き分けが良くなったな。やはり命までは惜しいだろう?」

ナデシコは立ち上がりキチベエの隣に立つ。
奉行は小刀を取りだした瞬間だった。
キチベエはナデシコにアイコンタクトをすると2人は裏口へと走り出した。

「あ!?おい!こら!」

奉行たちは慌てて2人を追いかけるが野山を駆け回って育ち過ごした2人のことだ。
山のことなんて手に取るように分かる。
雨が降っているのならどこが滑りやすいか、どのルートが安全かなんて確認するまでもない。

山を統べる様に走る2人に奉行ら4人は追いつくことが出来なかった。
雨のせいで山の土地は滑りやすく視界も悪くなる。
あっという間に2人を見失った。


2人はとある場所までやってくると息を整えた。

「よかった…ここまで来れば追ってはこれまい…」


キチベエが振り返るとそこには人影すら見当たらなかった。

「キチベエ!なぜあんな危険なことを!?」

「母さんの事がバレたらあのオロチのことだ…
ところで母さんこれを見てほしい」

キチベエは少し前から大工の大将に教わりいろいろなものを作っていた。
それはナデシコもよく知っていた。しかしこれを作っていたなんてと驚きを隠せなかった。

「ずっと昔、一緒に旅しようって約束したから…
まだ完成はしてないけど、行くなら今しかないと思って…」

「でも、ここから出るってなると…船の大破とか…
荒波だってあるはずよ?」

「おれを信じてほしい…!」

キチベエの真っ直ぐな目にしばらく考えてから覚悟をした。

「今はまだ逃げるだけ…いつか機会を伺って戻ってきましょう…!絶対生きるのよ!」

キチベエは絶対だと約束し2人は船に乗り込んだ。

すぐに小型の船が動き出すと滝を滑るように落ちていった。落下衝撃はさして無いもののその揺れにナデシコは戦いた。
船は方位磁石もログポーズもなしに風の赴くまま海を進んだ。
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