第4章 総長と副総長
「自分勝手すぎるよ…二人は、もっとかっこよくいてよ」
「……」
項垂れるタケミっちを、マイキーがジッと見つめる。
「タケミっち」
「いいよもう、帰ってくれよ‼︎」
「あのさ…さっきからずーっと──アタマにウンコついてるよ」
「へ?」
「ん?」
マイキーの言葉を理解するのに数秒。
「えーーー⁉︎なんじゃコリャ‼︎」
アタシが目を凝らすと丁度、タケミっちが自分の頭を叩いて“それ”を取り払ったところだった。
放物線を描いて地面に落ちる茶色い物体を目にして、アタシは「うわぁ」と呟き顔を青くする。
「キッタネー、タケミっち‼︎ハハハハ!」
「さっきゴミにつっこんだ時だ!」
腹を抱えて爆笑するマイキーとドラケンに、タケミっちがバッと顔を向けた。
「なんで、もっと早く言ってくんないンスか!!?」
「だって、すげー真剣なんだモン!アタマにウンコついてんのに!」
「真剣って‼︎そりゃ二人が──」
「逃げろケンチン!ウンコが来んぞ‼︎」
「臭っせっ」
マイキーとドラケンは二人して走り出し、笑いながらタケミっちの家から離れて行った。
(あれ?…仲直り…してる…?)
それを見てたアタシは、掴んでた窓枠から手を放して、自分の胸に手を当てる。
「マイキー今、ケンを……」
逃げる時にマイキーは、確かに「ケンチン」とドラケンを呼んでいた。
その事に、ドラケンは怒らなかった。
ずっと二人とも、お互いの名前を聞くのも嫌なくらい怒ってたのに……
タケミっちの涙ながらの訴えと、笑ってしまうような珍事に、二人は仲直り出来ていた。
良かった……良かった、本当に!
「ハァァァ」
自分の胸を押さえたまま、アタシは深く息を吐き出した。
「しかし頭臭っせーな。これどうやって取れば…」
タケミっちが友人達を振り向くと、4人はそろそろと離れてってるところだった。
「逃げんなよオマエら‼︎」
敦くん達は、「やべー」「くっせー」「にげろー」と口々に言いながら走り去っていく。
「皆ひでぇよ!!!」
タケミっちの大声と、敦くん達の笑い声を聞きながら、アタシはタケミっちの部屋を後にした。
「ありがとう、タケミっち」
後で本人にちゃんと伝えなきゃな。