第1章 東卍の参謀
数万円分はありそうな千円札の束を見せながら聞くと、ドラケンは興味なさげな顔で「いらね」と返した。
「マイキーは?」
「別にいらねー。ユウが使ったら?」
「アタシもいらないんだよなー」
まぁ、何かで入り用になった時のために、東卍の経費として置いとくかな。
「今度こそ帰ろー」
「うん。──タケミっち!」
マイキーが帰る前にタケミっちを呼ぶと、タケミっちはまた体をビクつかせた。
「またネ♡」
「またねー、タケミっち」
マイキーを先頭にアタシとドラケンも歩き出し、広場を後にする。
「テメェら、ボーっとしてないで解散しろー」
最後にドラケンがそう呼びかけたけど、あの不良達は暫く動かないと思う。
みんなマイキーにビビり散らしてたから。
「和月ー」
「んー?」
マイキーが、またピタッとアタシの隣にくっ付いた。
「歩き辛いから離れて。あと血ついてるよ」
「じゃあ和月が拭いて♡」
言うと思った。
アタシは仕方なく、スカートのポッケからハンカチを取り出して、マイキーの顔についてるキヨマサからの返り血を拭いてやる。
すると、マイキーはハンカチ持ったアタシの手を掴んで、自分の頬に擦り寄せて目を細めた。
さっきまでひと一人ボッコボコにしてた男が、こんな甘えた仕草ってどうよ。
「今から和月ん家寄っていい?」
「ダメ」
「えー!何で⁉︎」
「アタシはまだ怒ってんの」
マイキーの手を離すとハンカチをしまって、アタシはジト目でマイキーを睨む。
「アタシを待たせてどら焼き買いに行った」
「謝ったじゃん」
「謝ってないよね⁉︎」
「……謝ってないっけ?」
首を傾げるマイキーを指差しながら、アタシはドラケンを振り返る。
「ケン、早くこのバカ引き剥がして」
「オレに振るなよ」
そう言いつつも、ドラケンはアタシに味方してマイキーを剥がしてくれる。
「やだやだ!和月ん家行きたい!」
「ダーメ!」
「彼氏が彼女の家遊びに行ったっていいだろ!」
「彼氏なら彼女の気持ち優先してくれてもいいでしょ?」
マイキーは諦め悪く駄々をこねたけど、アタシも頑として譲らなかった。